「なんでチャットじゃなくて音声なの?」という話。 – おはなしAI ハル
開発者ブログ

「なんでチャットじゃなくて音声なの?」という話。

佐藤孝之 佐藤孝之

おはなしAI ハルを作っていると、結構聞かれることがあります。

「なんで音声なんですか?」

「チャットAIじゃダメなんですか?」

正直、めちゃくちゃ分かります。

というか、私も最初はそう思っていました。

チャットAIの方が圧倒的に楽なんです。

音声認識を作らなくていい。

音声合成もいらない。

返事も速い。

サーバー代も安い。

トラブルも少ない。

開発する側からすると、いいことしかありません。

だから最初は、「別にチャットでいいじゃん。」と思っていました。

でも、開発を続けているうちに、ちょっと嫌になったんです。

というのも、最近の世の中って、文字が多すぎませんか。

LINE。

メール。

仕事のチャット。

SNS。

ネットニュース。

ネットショッピング。

銀行。

役所。

病院。

気が付くと、一日中、何かしら文字を読んでいます。

これ、私だけなのかな。

夜になると、もう文字を見るのが嫌になる日があるんです。

仕事が終わって、スマホを見る。

LINEが来てる。

返信する。

SNSを見る。

コメント返す。

また文字。

また文字。

また文字。

便利なんですよ。

便利なのは間違いない。

でも、何か疲れる。

そんなことを思う日があります。

これ、結構怒られる意見かもしれないんですけど。

私は、チャットって、人間が本当にやりたかったコミュニケーションじゃない気がしています。

単なる妥協というか。

便利だから使ってるだけというか。

昔、友達に用事があったら電話してましたよね。

それがメールになって。

LINEになって。

スタンプになって。

最後は「いいね」だけ。

便利になったはずなのに、何となく会話が減ってる気がするんです。

私は、この感覚がずっと引っかかっています。

それで、ちょっと個人的な話をします。

母親と電話することがあるんです。

別に仲が悪いわけじゃない。

でも、そんなに長電話するタイプでもありません。

「元気?」

「元気。」

「そっちは?」

「元気。」

ここで終わる。

沈黙。

お互い何も話さない。

昔は、この沈黙が嫌でした。

何か話さなきゃ。

面白い話をしなきゃ。

そう思っていました。

でも最近、どうでもよくなりました。

何も話してないけど、別にいいか。

元気そうだし。

そのくらいの距離感が、一番自然なのかもしれない。

そう思うようになりました。

これ、不思議なんですけど。

LINEだと沈黙ってないですよね。

返事が来ないと、

「何か悪いこと言ったかな。」

って考える。

既読が付いたら、

「なんで返事くれないんだろう。」

って考える。

でも電話って、

「あー。」

「うん。」

「そうか。」

だけでも成立する。

あれ、結構すごい発明だったんじゃないかと思っています。

最近のAIを見ていると、何か違和感があります。

ものすごく頭がいい。

質問すると何でも答えてくれる。

文章も上手。

でも、雑談していて楽しいかと言われると、私はちょっと違います。

優等生すぎる。

空気を読みすぎる。

正しいことしか言わない。

人間って、そんな生き物でしたっけ。

話してる途中で忘れるし。

話が脱線するし。

急に昔の話始めるし。

この前なんか、母親と電話していて、二人とも何の話してたか忘れました。

「あれ、何の話だっけ。」

「知らない。」

「まあいいや。」

で終わりました。

そんな会話あります?

ありますよね。

でも、それでいいんです。

私は、ああいう会話が結構好きです。

実は、おはなしAI ハルを音声にした理由って、すごく技術的な話だと思われがちなんです。

音声認識がどうとか。

感情解析がどうとか。

リアルタイム処理がどうとか。

もちろん、そういう話もあります。

でも、本音を言うと、多分もっと単純です。

私は、80歳になった自分を想像したことがあります。

一人で家にいる。

子どもは仕事。

孫は忙しい。

友達も昔より減っている。

そんな時に、

スマホを取り出して、

小さい文字を読んで、

キーボードを開いて、

「こんにちは。」

って打つ自分が、どうしても想像できなかったんです。

多分、

「おーい。」

って呼びかけると思う。

「今日、暇なんだけど。」

って話しかけると思う。

その方が、人間っぽい気がする。

もちろん、全部私の勝手な想像です。

研究データを見たわけでもありません。

未来の自分にインタビューしたわけでもありません。

でも、おはなしAI ハルって、多分そこから始まっています。

これも変な話なんですけど。

開発をしていると、

「もっと速く。」

「もっと賢く。」

「もっと自然に。」

って毎日思います。

でも、その一方で、

「人間って、そんなに完璧だったっけ。」

とも思います。

私は、少し前まで、

AIは人間を超えるべきだと思っていました。

最近は違います。

超えなくていい。

というか、超えたら、ちょっとつまらない。

少しくらい考え込んでもいい。

少しくらい言い間違えてもいい。

少しくらい間があってもいい。

話し相手って、多分そういうものです。

そして、もし誰かに、

「なんでチャットじゃなくて音声なんですか?」

と聞かれたら。

技術的な説明はいくらでもできます。

でも、多分、本当の答えはこれです。

最近の世の中、みんな文字を見すぎて、ちょっと疲れてるんじゃないかな。

私は、そう思っています。

間違っているかもしれません。

でも、そのちょっとした違和感から、おはなしAI ハルは生まれました。

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